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2010.02.02

『レベッカ』 翻訳読み比べ(その1)

ダフネ・デュ・モーリア著『レベッカ』の翻訳読み比べ
レベッカ本
左は大久保康雄氏翻訳の『レベッカ』(上・下巻、新潮文庫、1971年。画像は上巻のみ)
中央は茅野美ど里氏翻訳の『レべッカ』(上・下巻、新潮文庫、2008年。画像は上巻のみ)
右は私が購入した原文の”Rebecca” (Virago modern classics、ペーパーバック、全1巻、2003年) です。


●2通りの翻訳

 私は『レベッカ』を2通りの翻訳で読みました。
 どちらも新潮文庫で、一つは1971年の大久保康雄氏による翻訳。こちらは随分前から品切れ状態なので古本でしか買えないと思います。
 もう一つは2008年の茅野美ど里(ちの みどり)氏による翻訳です。現在書店で買えるのはこちらです。


 この2つの翻訳を読み比べしました。翻訳が違うと味わいも違いますね。私は大久保氏の翻訳を先に読んだこともあって、私は大久保氏の翻訳の方が好きなんですが(汗)、茅野氏の翻訳でなるほどと思ったり、理解が深まったところも多々あります。あと、茅野氏の文庫本の訳者あとがきと恩田陸氏の解説は面白いです。デュ・モーリアが当初『レベッカ』のエピローグにするつもりだったという“後日談”が紹介されていて、非常に興味深く読みました。(注:あとがきを先に読んではいけません!本編を読んでこその面白さですので。)


 両方読んでよかったです。それぞれ通しで読んだり、比較しながら同時に2冊読んだり。翻訳の意味合いが全然違う部分があるので、これはどういうことなのかなー、と原文ともにらめっこしています。

時間はかかりましたが、非常に面白かったです!




●翻訳の違い

大久保氏と茅野氏、両氏の翻訳の違いについて。
以下は、私が読んだ印象です。あくまでも個人的な意見です。

大久保氏と茅野氏、両氏の翻訳の違いは「わかりやすさ」にあると考えます。

 
 大久保氏の翻訳は、言い回しが古風で趣のある翻訳です。物語の世界観は古き良き時代、遠い異国のお話といった感じ。曖昧模糊とした、くすんだ印象。そして漢字ではなくひらがな表記が非常に多い。主人公の女性の若さや拙さが伝わってくる翻訳です。
 ときおり含みのあるわかりにくい(いろいろな意味にとれる)翻訳もありますが、そのわからなさが幻想的な雰囲気や不気味さを増幅させるとともに想像力をかき立てます。ただ、まわりくどい・難解ともとれるため、読み進めるのに苦労したりもします。時代にそぐわなくなってしまった翻訳もあります。


 対して茅野氏の翻訳は、非常に現代的な、明瞭な翻訳です。マイルやフィートがメートルに直してあったり、言葉づかいも現代的ですし、現代に引きつけて翻訳されていると思います。わかりやすいです。物語の世界観は大久保氏訳に比べ、クリアーで現代に近い感じがします。
 私は大久保氏訳と茅野氏訳を同時読みしていると、茅野氏訳の『レベッカ』の方が読み進めやすいと感じます。着実に物語が進行している感じ。登場人物の心の内も大久保氏訳よりはっきりと感じられる翻訳です。

 ただし、わかりやすさが災いしてか、あっさりしているな、という印象も。人によっては想像力をかき立てられないかもしれません。あと、言葉がくだけすぎかな…とも思います。わかりやすいのですが、ちょっとムードに欠けるかな、と。なじみのないカタカナ用語が出てきて逆にわかりにくかったりもしました(汗)



●具体例

百聞は一見に如かず、具体例を挙げてみます。
以下は「わたし」の服装の描写ですが、大久保氏訳と茅野氏訳ではこんなに違います。

大久保氏の翻訳。

さんざん着古した上着は重たかったけれど、スカートはとても軽かった。それからまた、ふちの広すぎるみすぼらしい帽子や、一本のひもで足にくくりつけられた踵(かかと)の低い靴(くつ)、よく動く手にはめられた長手袋など。


(大久保訳、上巻、p.57)

茅野氏の翻訳。

着古したフラノのスーツ。サイズが合っていないうえ、そっちをはくことが多かったので、上着より色が褪(あ)せてしまっていたスカート。鍔(つば)が広すぎるよれよれの帽子、ストラップ付きのローヒールシューズ、汗ばんだ手で握りしめた長手袋。


(茅野訳、上巻、p.57)


※いずれも、( )内はルビ。


イメージしやすさでは、茅野氏ですねー。茅野氏の翻訳は私たちが馴染んでいる現代語を使っているからでしょうか。大久保氏訳は1971年(昭和46年)ですからね。当時は通じたのかもしれませんが。あと訳者が男性か女性かでも違いますね。



細かいところでは
大久保氏訳「流行性感冒」  茅野氏訳「インフルエンザ」
        「みかん」            「オレンジ」
        「桔梗」              「ブルーベル」
        「装飾暖炉」           「マントルピース」
        「小舟」              「ディンギー」
などなど。




 個人的に気になっていたのが、マキシムがパジャマの上に着ていたジャケット。大久保氏の訳では
「らくだのジャケット」
になっているんです(“らくだ”には傍点がついています)。


 “らくだ”っていうと私はバカボンのパパの着ているアレを思い出してしまい、混乱していました(笑)が、茅野氏の訳では「キャメルのジャケット」になっていました。ああ、キャメル色のジャケットってことね…汗

翻訳の比較、もうちょっと続きます。
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2014.03.15 | | # [ 編集 ]
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